修士論文 · UNIST · 2026

デザインとエンジニアリングをつなぐ、非ヒューマノイドロボット動作のフレームワーク

本論文は、非ヒューマノイドロボットのために文脈に適した身体動作をデザインする3段階のフレームワークと、それを実践するためのツールを提案します。

製本された論文。黒いハードカバーに『A Framework for Designing Contextually Appropriate Physical Actions in Non-Humanoid Robots』のタイトルが入り、隣にはオレンジ色の3Dプリントパーツが置かれています

概要

タイトル

A Framework for Designing Contextually Appropriate Physical Actions in Non-Humanoid Robots

指導教員

KwanMyung Kim教授

審査委員

James Self教授、Jaeyeon Lee教授

論文審査

2025年12月16日。2026年2月にエンジニアリングデザインの修士号を取得

開発したツール

Blenderアドオン、WebベースのCSVプロッター、iOS向けARアプリ、visionOSアプリ

評価の参加者

高齢者と若年層の参加者、Blenderユーザー、デザインとエンジニアリングの専門家7名

デザイナーはアニメーションで考え、エンジニアはパラメータを必要とします。デザインの意図は引き継ぎの過程で失われ、ロボットは人が求めるようにではなく、モーターが許す範囲でしか動けなくなります。本論文は、このギャップに取り組みます。

「ユーザー体験とエンジニアリング上の実現可能性を両立させながら、非ヒューマノイドロボットの文脈に適した動作をデザインし、評価するための体系的なフレームワークを、どのように構築できるか?」

主要なリサーチクエスチョン(RQ)

テスト結果をデザインに還元する、3つのステージ

各ステージが次のステージへとつながり、テスト結果はデザインへフィードバックされます。

  1. 1

    ロボットの動作をデザインする

    動作カタログを作成し、動きをコンポーネントに分解して、ユーザーの好みを測定します。

    ステージ1
  2. 2

    統合とエクスポート

    ロボットの物理的制約に照らしてアニメーションを検証し、実現不可能な動きを修正して、エンジニアが使えるデータをエクスポートします。

    ステージ2
  3. 3

    拡張現実でテストする

    ハードウェアの完成を待たずに、iPhoneのARで等身大のロボットを人々の自宅に配置し、Apple Vision Proでも確認します。

    ステージ3
従来の動作デザインのワークフローと提案手法を比較した図。従来はテキストと3Dアニメーションからエンジニアリング、プロトタイプテストへと進むループを繰り返しますが、提案手法ではエンジニアリングの前にARでの展開と早期のユーザーテストを加えます
従来のワークフローでは、物理的なプロトタイプができるまでユーザーテストを行えません。このフレームワークは、それをARで前倒しします。

ステージ1 · ロボットの動作をデザインする

ユーザーの好みに基づく、コンポーネントベースの動作デザイン

このステージでは、Lemmyの研究の手法を応用しています。デザイナーによるワークショップで22種類の動作カタログを作成し、インタビューで4つの動作コンポーネントを特定して、一対比較で好みを測定しました。

初期のラウンドでは、多国籍の若年層の参加者36名が曲線的な経路を好んだのに対し、高齢者は直線的な経路を好みました。動きの好みがユーザー層によって異なることを示す結果です。検証実験では、高齢者が好むコンポーネントで構成した動作が10点満点中7.7点となり、好まれないコンポーネントの5.3点を上回りました。

詳しく見る: Lemmy
薄暗いリビングルームにいるLemmyのレンダリング画像6枚。3つの焦点距離で、それぞれ被写界深度のあり・なしを描き分けています
刺激素材のデザイン。同じシーンを35、85、150mmの焦点距離で、被写界深度のあり・なしを変えて描画しています。

ステージ2 · 統合とエクスポート

自然に見えるアニメーションが、物理的に実現できるとは限らない

二輪ロボットは横に滑ることができず、穏やかに見える動きでも、どのモーターにも出せない車輪速度が必要になることがあります。そこで、アニメーション制作中にこうした制約を適用するBlenderアドオン、True RoboAnimatorを開発しました。

シャーシのみ
車輪は止まったまま、本体が経路に沿って滑るように移動します。
車輪を手作業でキーフレーム設定
手作業でキーフレームを打った車輪の回転は動きに近づきますが、一致する保証はありません。
True RoboAnimator
車輪の角度は、シャーシの動きそのものからフレームごとに算出されます。
BlenderのTrue RoboAnimatorパネル。検証、修正、車輪データのキャッシュ、エクスポートの各セクションがあります

検証、修正、エクスポート

  • 動きを検証。ロボットが横滑りせざるを得ないフレームを、すべて検出します。

  • 自動修正。実現不可能な経路を、滑らかなS字カーブか「回転・移動・回転」のシーケンスに置き換えます。修正は元に戻せます。

  • 車輪の運動学。左右の車輪の角度と回転数(RPM)を、速度と加速度の上限を考慮して計算します。

  • エンジニアリング向けエクスポート。フレームごとまたは固定レートのCSV、AR用のキーフレームCSVまたはJSONを書き出せるほか、データを確認するためのWebプロッターも用意しています。

実現不可能な経路を修正する2つの手法。直線的な「回転・移動・回転」による解と、滑らかなS字カーブによる解
アドオンが実現不可能な経路を修正する2つの方法。直線的な「回転・移動・回転」のシーケンスか、ロボットの最小回転半径を守る滑らかなS字カーブです。

True RoboAnimatorに対するBlenderユーザーの評価

外部のBlenderユーザーによる、思考発話セッション後の平均評価(10点満点)

  • 応答性と安定性8.6
  • 既存のワークフローになじむ8.4
  • 使わない場合より優れている8.2
  • 総合的な満足度7.6
  • 反復作業を支援する7.4
  • 動きの探索と表現に役立つ7.0
  • 理解しやすい6.8

クラッシュの報告はありませんでした。最も評価が低かったのは理解のしやすさで、次のバージョンではワンクリックのブラックボックスとして動作するのではなく、中間ステップを見せる必要があります。アドオンはその後Blenderの公式審査を通過してBlender Extensionsで公開され、これまでに7,000回以上ダウンロードされています。

ステージ3 · 拡張現実でテストする

参加者の自宅で行う、等身大のARテスト

画面の中では、ロボットは小さくなり、動きは平板になります。ネイティブのiPhoneアプリがLemmyを実寸で床に固定するので、参加者は自分の家具と比べながらその動きを観察できます。

Lemmy AR Experienceアプリ。ホーム画面、3Dレンダリング付きの動作画面、実際の床に立つLemmyのARビュー、アクセシビリティオプションを備えた設定画面、TestFlightのページ
最終版のLemmy AR Experienceは、TestFlightで配布しました。設定には、高コントラスト、テキストサイズ、触覚フィードバック、サウンドがあります。

CADからデバイスまで、ネイティブで実装

アプリはSwift、SwiftUI、ARKit、RealityKitで開発しています。ロボットを床に固定し、検出した平面への配置と再配置、ピンチでの一時停止、インターフェースを含まないスクリーンショットの撮影に対応しています。基本、機能、表現の3つに分類された20種類のアニメーションを収録しています。

各アニメーションはLemmyのエンジニアリング用CADから始まり、Blenderとアドオンを経てUSDZとして書き出されます。そのため、人々がARで目にする動きは、エンジニアが受け取るデータと一致します。

パイプライン図。SolidWorksからSTLファイルを書き出し、Blenderで最適化、アニメーション、修正を行い、USDZファイルを経てSwiftアプリへ
SolidWorks → STL → Blender → USDZ → Swift.
仮想環境に浮かぶvisionOSのウィンドウ。Lemmyの動作バリエーションが一覧表示されています
visionOS版はメニューウィンドウとイマーシブスペースを組み合わせたもので、Apple Vision Proとシミュレータで動作を確認しました。
MacのReality Composer Proで開いたLemmyのモデル
Reality Composer Proでのモデルの準備。どちらのアプリも、TestFlight向けのAppleの審査を通過しました。

AR体験に対する参加者の評価

平均評価(10点満点)。17〜29歳の参加者が、自宅で自分のiPhoneを使って体験しました。

  • 明瞭さ8.3
  • 安定性8.1
  • 使いやすさ8.0
  • 大きさ、向き、経路を判断しやすい7.8
スケール

ARで大きさと経路がわかりやすくなりました。参加者は自分の空間を基準に、ロボットの大きさ、向いている方向、進んでいく先を判断できました。

ペットのよう

動きだけでは感情は伝わりませんでした。ラベルなしで見せると、表現的な動きはしばしば誤って解釈されました。速い動きは警戒と受け取られ、多くの参加者がLemmyを「ペットのよう」と表現しました。

マルチモーダル

表現にはマルチモーダルな手がかりが必要です。今後は動きだけに頼るのではなく、ロボットの画面やサウンドによる手がかりと動きを組み合わせていきます。

詳しく見る: Life-size AR

フレームワーク全体の専門家評価

学士取得後2〜6年の経験を持つ20代の専門家7名が、フレームワーク全体をレビューしました。4名はデザイン分野(UI/UX、インダストリアル・プロダクトデザイン、XR)、3名はエンジニアリング分野(ロボティクスソフトウェア、VR/AR、メカトロニクス)の専門家です。

ウォークスルー後の専門家の評価

平均同意度(10点満点)

  • ARテストで妥当な知見が得られる8.6
  • 明確でわかりやすい8.4
  • 必要なステップを網羅している8.4
  • 新しい、または改良された手法である8.4
  • デザイナーとエンジニアの橋渡しになる8.0
  • 実際のプロジェクトで使える7.9
  • アドオンがアニメーションをエンジニアリングデータに変換する7.9
  • 他のロボットや文脈にも応用できる7.6

専門家の懸念が、次のステップを示す

専門家は、調整可能な動作コンポーネント(「ノブ」)、フレームワークが3Dアーティストに与えるサポート、CSVエクスポートを高く評価しました。一方で、次のような懸念も挙げられました:

  • 画面、サウンド、距離のチャネルは、まだ扱われていません。
  • ARでは、モーターの騒音や重さを伝えられません。
  • より複雑なロボットへの一般化は、まだ明らかではありません。
  • バリデータがワンクリックで処理する仕組みは、信頼しにくいと感じられます。

これらの限界が、次のステップを決めます。年齢、文化、ロボットを変えて好みの研究を再現すること、より多くの駆動方式に対応すること、マルチモーダルな手がかりを加えること、そして同じエクスポートデータを実際のハードウェアでテストすることです。

着席した3人のレビュアーに、LemmyアプリのARページについてのスライドを説明するDanyal
UNISTでのARアプリの発表。