ケーススタディ · 人間中心のAI
人はAI生成動画を見抜けるか
生成AIによる動画は、わずか数年で不気味なものから本物らしいものへと進化しました。この統制実験では、訓練を受けていない視聴者がそれをどれだけ正確に見抜けるのか、そしてどのような条件で見抜けなくなるのかを測定します。
87人の参加者による3,132回の「実写かAIか」の判定における値(チャンスレベルは50%)。
概要
デザイナー兼研究者、筆頭著者
R. M. Karim教授(NUST)、KwanMyung Kim教授(UNIST)との共同研究
IASDR 2025、ピクトリアル部門、台北
18〜70歳の成人87人。AI、グラフィックス、映像の専門的な経験を持つ人は含まれていません
参加者内計画のオンライン実験、二肢強制選択、ランダムな提示順
ロジスティック回帰(Holm–Bonferroni補正)
合成メディアの研究は、顔や声のディープフェイクに集中してきました。しかし現在、デザイナーやメディアアーティストはAI動画を3つの異なる方法で活用しています。テキストからのクリップ生成、静止画のアニメーション化、そして実写映像のフレーム外への拡張です。これらの手法が並べて比較されたことは、これまでありませんでした。
訓練を受けていない視聴者は、それぞれの生成手法をどれだけ正確に見抜けるのか?
コンテンツのテーマは、手法ごとの判定にどのような影響を与えるのか?
36本のクリップによる、バランスの取れた刺激セット
実写とAI生成が半数ずつで、3つのテーマに均等に配分しています。予備実験では、AIは静物などの一部の被写体を、人物や動きよりもはるかにうまく描けることがわかりました。そこでテーマを変化させ、比較のバランスを保っています。
刺激の設計
テーマ・ソース別のクリップ数
刺激の生成
パイプラインを統一し、手法だけを変える
すべてのAIクリップはComfyUIで制作しました。そのノードグラフにより、拡散ステップ数、ガイダンス、プロンプトの重みを手法間で同一に再現できます。条件ごとに5人のデザイナーが候補を生成し、視覚的な忠実度、時間的な一貫性、テーマとの関連性にもとづいて1本を選びました。
実写クリップは、同じテーマに合わせて、一般公開されているストック映像やアーカイブ映像から選びました。36本すべてを8〜12秒にトリミングし、1080pにそろえ、音声なしで提示しました。
手順
36試行の二肢強制選択
各クリップは1本ずつランダムな順序で表示され、何度でも再生できます。
「この動画は実写だと思いますか、それともAI生成だと思いますか?」回答の選択肢は「実写」と「AI」です。
疲労を抑えるため、18本を見終えた時点で短い休憩を挟みます。
参加者にはAIクリップの割合を伝えず、各クリップを映像の内容だけで判断するよう指示しました。
判定の正答率は、手法とテーマによって変わった
ソース別の正答率
正しく分類されたクリップの割合。実写映像では「実写」が正解です。
テキストから動画の正答率はチャンスレベルを下回り、アウトペインティングはチャンスレベルと同程度でした。画像から動画には、視聴者が気づける動きの手がかりが残っていました。
実写の自然映像は、しばしば合成と判定されました。環境テーマの実写クリップが正しく分類されたのは約48%にとどまり、手つかずの自然の風景はAI生成のように見えることが多くありました。
テーマは、アウトペインティングの判定に強く影響しました。アウトペインティングは、環境テーマの試行では61%で見抜かれましたが、歴史テーマではわずか32%でした。
画像から動画の手がかりは、テーマを問わず有効でした。画像から動画のクリップは、映画、歴史、環境のどのテーマでも一貫して識別されました。
| 項(映画テーマの実写映像との比較) | オッズ比 | p |
|---|---|---|
| 画像から動画 | 1.13 | n.s. |
| テキストから動画 | 0.50 | .001 |
| アウトペインティング | 0.45 | .001 |
| 環境テーマ | 0.37 | < .001 |
| 画像から動画 × 環境 | 8.22 | < .001 |
| アウトペインティング × 環境 | 6.89 | < .001 |
| テキストから動画 × 歴史 | 0.44 | .003 |
| アウトペインティング × 歴史 | 0.41 | < .001 |
| 手法、テーマ、およびその交互作用はいずれも有意でした(p < .001)。p値はHolm–Bonferroni法で補正しています。参加者87人 × クリップ36本 = 3,132件の観測。 | ||

メディアリテラシーと創作実践への示唆
AIへの意識が、実写映像への信頼を損なう
実写クリップが正しく分類されたのは64%にとどまりました。視聴者がAIコンテンツを予期していると、本物の映像までもが合成に見え始めます。
知覚されるリアリティは、モデルだけでなくコンテンツで決まる
知覚されるリアリティはモデルに固有の性質ではなく、クリップが何を描いているかによって変わります。クリエイターはこれを意図的に利用して、作品がどれほどリアルに見えるかを調整できます。
判定トレーニングは、アーティファクトだけでなく文脈も扱うべき
メディアリテラシー教育や検出ツールは、モデル固有のアーティファクトに加えて、文脈上の手がかりも扱うべきです。直感だけでは不十分です。
限界と今後の課題。オンラインで視聴する短い無音のクリップでは、生態学的妥当性に限界があります。今後は、インペインティング、ControlNet、深度を考慮した動画などの手法を加え、確信度の評価を収集し、参加者の属性の幅を広げ、トレーニングによって判定が時間とともに向上するかを検証する必要があります。